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生活支援ための車椅子ロボット

介助無しでは日常生活動作が困難な高齢者や四肢の不自由な障害者にとって,生活用補助具へのニーズは大きいという現状があります.しかし,既存の生活用補助具では重度の四肢麻痺障害者にとっては限界があり,介助者の存在なくして生活を維持することは難しいと言えます.そこで本研究では,四肢が不自由な人々の失われたモビリティ機能及び腕の機能を,電動車椅子と現代の巧みな動作が可能なロボットアームを組み合わせたシステムに代替させることに着目しました.本プロジェクトでは,車椅子利用者の日常生活支援を目的として,作業性のよい・リスクフリーな小型ロボットアーム,使用者の負担を軽減するインターフェース,及びロボット・パーセプションを利用する知的操作支援技術などの研究により,「床に落ちたものを拾う」「机の上にある飲み物を口元に運ぶ」「ドアを開ける」「顔を掻く」などの作業の支援を目指しています.

作業機能よい・リスクフリーな小型ロボットアーム

図1:ロボットアームを車椅子に搭載した様子

四肢の不自由な人々を支援するためのロボットアームの研究は,既に様々な国々の研究機関等で研究されており,その機能は多岐に渡ります.しかし,現状では「成功」といえるほどの成果を挙げている研究は存在していません.生活支援を目的とするロボットアームでは,人間社会の中で共存するために様々な解決しなくてはならない問題が存在します.特に人間の生活に密に関わる生活支援用ロボットアームは直接人間に接触する環境におかれます.そのため機能はもとより,リスクフリーが極めて重要視されます.また,リスクフリーの他にも,ストレスを感じさせない動作の実現をするための機動性,あらゆる車椅子に装着可能であり様々な状況での使用を見込むことができる汎用性,日本という狭い住環境における移動性,乗降時で邪魔にならないコンパクト性,誰にでも手の届く価格帯を維持するための低コスト性等,様々な要素を検討しなければなりません.

そこで本研究では,車椅子搭載型ロボットアームの開発にあたり,多自由度,作業性を満たした上で収納機構を備えていること,自重補償機構を用いることで軽量であることの3つを設計要件として開発を行いました.図1に本研究で開発された作業性のよい・リスクフリーな小型ロボットアームを電動車椅子に搭載する様子を示します.

アーム・ナヴィゲーションによる知的操作支援

図2:OpenVRによる日常生活支援の様子

車椅子搭載型ロボットアームの操作にあたっては,細かい動きでも全て指示が必要であるため,利便性に問題があります.本研究では,この問題を解決すべく,ロボットアームの自動化による知的操作支援システムを構築し,操作者の負担を軽減することを目的としました.

ロボットアームの自動化を考慮すると,高機能な逆運動学ソルバ,動作計画アルゴリズム,タスク・プランニングアルゴリズムが必要になります.そこでコンピューティング・アルゴリズムを開発し,アーム・ナヴィゲーションシステムを構築することで,ハイレベルなタスク・ディスクリプションを入力するだけで,各種類のタスクを簡単に達成することを可能としました.

ソフトウェア・プラットフォームの開発においては,ProEやSolidworksからのCADデータを直接使用しバーチャルロボットや世界モデルを構築できる“Open Virtual Robot”(OpenVR)というソフトウェア・プラットフォームを開発しました.OpenVRを用いると,パソコン上でロボット実機を模擬することができ,実際に使っているロボットと同様のバーチャルロボットを研究者に提供可能なため,アルゴリズムの開発など様々な場面で研究開発を支援することができます.図2に車椅子ロボットを用いた日常生活支援の様子を示します.

インテュイティヴ操作インターフェース

使用者に対する適応性や操作性の問題を解決するため,インテュイティヴな操作インターフェースの開発も行なっています.

3Dカメラによるロボット・パーセプション

ロボットアームの自動化にあたり,環境情報も不可欠になるため,3Dカメラを利用し,環境を理解するロボット・パーセプションの研究も行っています.



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